【談話】

厚生労働省の社会保障審議会年金部会「意見書」について

半世紀におよぶ改悪の連続では年金制度への信頼と安心は確保できない

2003年9月12日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


 本日、02年1月から審議が行われてきた厚生労働省の社会保障審議会年金部会が「年金制度改正に関する意見書(以後意見書)」を厚生労働大臣に提出した。これを受けて、政府は10月にも政府案をまとめ、来春には国会に法案を提出するとしている。

 「意見書」は、「04年改正での制度体系のあり方については意見の一致を見るにいたらなかった」としながらも、実際には「保険料水準の固定方式」による1.5倍の保険料の引き上げと、「給付水準自動調整のしくみ」を導入し現在の59.6%の給付額水準を55%から50%、さらには47%にも削減する大規模な改悪の内容である。さらに、短時間労働者の厚生年金適用を行い、400万人のパート労働者から保険料を徴収するという、徴収拡大の方向も示した。

 その一方で、基礎年金の国庫負担増額に対しては、その具体化を先送りし、年金生活者への課税や、厚生年金、国民年金の保険料の引き上げ凍結解除、保険料未納者の強制徴収を確実に行う仕組みの構築を求めている。ここには国民がねがっていた、「信頼と安心」の改革はどこにもない。この「意見書」の内容で、当初の問題意識であった「年金制度への信頼」が図られるのか、将来への安心した生活設計が可能なのか大いに疑問である。

 また、5日に厚生労働大臣の「坂口試案」が発表された。社会保障審議会の「意見書」ではふれていない、年金積立金の取り崩しや基礎年金の国庫負担への段階的増額が示されたが、国民の年金制度への不信感や怒りと、年金改善への世論の高まりに対する「ポーズ」であって、決して年金制度の基本的矛盾を解決するものではない。このことは、財務省が示した年金制度改革の基本方針との矛盾でも明らかである。

 「誰もが安心」の年金制度の確立は緊急の課題である。いま年金制度改革に必要なのは、倒産・失業、リストラなどに歯止めをかけ、雇用を確保すること、男女均等待遇の確立など男女の年金格差を解消することをはじめ、無年金者と低額年金者の解消をめざすことである。

 年金不安を駆り立てる保険料などの負担増・給付削減ではなく、真に国民の信頼を得られる改革が求められている。年金制度を改革するうえで、必要なのは、高くて払えない被保険者、低額受給者・無年金者を無くすこと、また、女性の年金の不平等を解消することであり、そのためにも全額国庫負担による最低保障年金制度の創設が求められている。全労連は、「国の責任で、誰でも月額7万円の最低保障年金制度の創設」を提案している。また、雇用を拡大し、不況の克服、最低賃金の引き上げなど労働者・国民の収入安定を図り、年金財政を支える基盤を確立することが急務である。

 全労連は、今秋闘を年金改悪・大増税反対、雇用と地域経済を守る「国政転換03秋の全国キャラバン行動」にとりくむ。このたたかいを全力をあげて取り組むとともに、真に国民のための年金制度改善に取り組む決意である。