【談話】

2003年人事院勧告にあたって

−不当な賃下げを強いる「マイナス勧告」に強く抗議する−

2003年8月8日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内三夫


  1. 人事院は、本日、国会と内閣に対し、一般職国家公務員の給与改定に関する勧告を行なった。その内容は、官民較差解消のためとして、(1)月例給を平均1.1%・4,054円引き下げる、(2)扶養手当を500円引き下げる、(3)一時金(期末手当)の支給割合を0.25カ月分引き下げる、などというものである。このまま給与法が改悪されると、国家公務員労働者の年収は5年連続の引き下げを強いられることになる。しかも、今回のマイナスは平均年収16.3万円減と過去最大である。さらに、月例給の引き下げを、実質的に4月に遡って行う「不利益遡及」を再び行うよう勧告している。労働者を働かせ、支払った賃金を後で遡及的に切り下げる行為は不法であり、いかなる理由があろうと認められない。全労連は、人事院がこうした勧告を出したことに対し、強く抗議するものである。

  2. 深刻なデフレ不況のもと、人事院には、「情勢適応の原則」に従って社会経済情勢を十分に考慮し、不況打開を視野に入れた積極的立場での勧告を検討することが期待されていた。ところが、人事院は、経済団体や労働団体のまとめた民間賃金交渉妥結結果からも、かけはなれた官民格差を算出し、公務労働者への大幅賃下げを勧告した。「マイナス勧告」は、公務関連労働者約750万人の生活水準を直接切り下げるだけでなく、民間労働者や年金受給者など、広範な労働者・国民の生活に直接・間接に悪影響を及ぼす。実際、03春闘での民間労使の賃金交渉の場や、この夏の中央ならびに地方における最低賃金審議会の場において、使用者側からは、「マイナス勧告」を理由とした賃金引下げの主張が、当然のごとくだされていた。「マイナス勧告」は、広範な労働者に影響を与え、民間と公務の「賃下げの悪循環」を推し進め、所得・消費・生産が連鎖的に落ち込むデフレ不況の深刻化に拍車をかけるものであり、断じて認めるわけにはいかない。

  3. この間、労使交渉以前に人勧に関する具体的な内容が報道され、公務員賃金引下げの世論誘導が進められるなか、全労連は、公務労組連絡会、国民春闘共闘委員会とともに、人事院マイナス勧告阻止と最低賃金マイナス目安阻止の、ふたつの課題を結合させ、公務・民間一体のたたかいを進めてきた。この取り組みは全国各地で追求され、賃金底上げ闘争の共同が広がっている。「マイナス勧告」は強行されたが、この夏の闘争をとおして、今後の賃金闘争の発展につながる一歩を踏み出せたことに、確信をもつものである。
     今後は、「マイナス勧告」の実施を許さない賃金闘争を、労働基本権回復などILO勧告にもとづく民主的公務員制度の確立を求める課題と結合して前進させる。また、この秋には、政治の流れを変えるチャンスが到来する。「年金改悪・大増税反対、雇用と地域経済を守れ、国政転換03秋の全国キャラバン行動」を運動の軸にすえ、マイナス勧告の悪影響の突破はもとより、倒産・失業、生活破壊、地域経済の崩壊を進めてきた、小泉構造改革の転換を求める国民的共同のたたかいを発展させるべく、全労連として全力をあげて奮闘する決意である。

以 上



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