【談話】

労基法の一部を「改正」する法律案の成立について

2003年6月27日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 参議院本会議は本日、「労働基準法の一部を改正する法律案」について可決・成立した。成立した法律は、解雇ルールに関して当初の「解雇は原則自由」とする政府案を大きく修正するものとなったが、有期雇用や裁量労働制については附帯決議を附したものの本法での修正をはかることは出来なかった。

  2. 成立した労基法「改正」案は、使用者の解雇自由を明記した政府原案を大きく修正し、権利を濫用した場合の解雇を無効とした。政府案では、解雇ルールに関して「法律で制限されている場合を除き、使用者側は労働者を解雇できる」と明記されていたが、これでは労働者保護法としての現行法の性格を抜本的に転換させるものであり、日弁連など法曹界も厳しく批判してきた。
     成立した労基法「改正」案では、解雇ルールについて「解雇は、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とし、原案の危険な要素を削りこれまでの判例を具体化したものとなっており、評価することができる。さらに、参議院の附帯決議で、「整理解雇四要件に関するものを含む裁判例の内容の周知を図る」こととされたのは、大きな成果である。
     政府案を修正させ、積極的な附帯決議を採択させたことは、全労連はじめ労働界が一致して反対した運動の成果であり確信にすることが重要である。

  3. しかし有期雇用契約では、現行法で原則1年とされているものを3年に、例外3年を5年とし、常用雇用の有期雇用への置き換えや若年定年制の復活へ道を開くものとなった。法案修正で、上限3年有期について退職の自由を保障したものの、有期雇用契約の労働者に対する「雇い止め」という名の解雇がまかり通っていることを考えるなら、期間延長という改悪は認めるわけにいかない。
     また、裁量労働制については、企画業務型の導入要件を緩和し、対象事業場を本社・本店だけでなく拡大できる内容となった。今回、附帯決議で「裁量労働制の適用事業場の拡大、手続緩和が、サービス残業隠しに悪用されることのないよう、適用対象事業場についての基準を設ける」とされたが、厚生労働省がこれを踏まえて不払い残業を撲滅するための厳格な「基準」をすみやかに提起することを求める。

  4. 使用者によるルール無視の無謀なリストラが横行する中で、解雇規制が法律上明確化されたこと、解雇権濫用について「使用者側に主張・立証責任を負わせている」ことの確認がなされたことなどについて、厚生労働省が広く周知徹底させることを求める。
     全労連は、今回の労働法制改悪に反対して、全国の労働者・労働組合が、宣伝・署名行動、集会、デモ、職場からのストライキなどあらゆる大衆行動でたたかい抜いたことに心から敬意を表する。今後、改悪された労基法・労働者派遣法などの職場への持込みを許さず、働くルールを確立するために全力をあげてとりくむ決意を表明するものである。



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