【談話】

「医療制度抜本改革の基本方針」の閣議決定にあたって

2003年3月28日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 本日、「医療保険制度抜本改革の基本方針」が閣議決定された。この閣議決定は平成14年7月に成立した健康保険法の一部改正法付則の、平成14年度中に(1)保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系のあり方、(2)新しい高齢者医療制度の創設、(3)診療報酬体系の見直しの各事項について、その具体的内容、手順及び年次計画を明らかにした基本方針を策定するという規定に基づき決定されたものである。高齢者医療制度の創設は2005年通常国会に関連法案を提出し、08年度実施を目指すとしている。診療報酬体系は、04年度の改定から実施するとしている。

  2. 今回の「閣議決定」によって、国民健康保険、政府管掌保険を都道府県単位の運営とする保険者の統合再編は、全国知事会も反対を表明している。それは、皆保険制度の根幹を揺るがす保険料格差が生じ、医療サービスの格差が発生することになりかねないことを懸念されるからである。また、政管健保民営化へふみこむものとして許されるものではない。
     また、創設される高齢者医療制度は、これまでの拠出金制度を廃止し、給付の5割を公費で負担し、残りの5割を高齢者自身の保険料と現役世代が支援する「連帯保険料」で負担する新たな制度である。これにより、現在でも諸外国と比べて少ない企業の責任は大幅に軽減され、社会保障制度であるべき高齢者の医療制度が、国民と高齢者同士の助け合いの制度に改変され、いまでも重くなっている家計負担が増すことになる。国と大企業が社会保障に対する責任をどう果たすのか、今後の社会保障制度のあり方にもかかわる根本的な問題を含んでいる。
     そして、診療報酬の改定によって公的医療保険の適用範囲が制限され、患者の負担増による受診抑制が一層進むことが懸念される。あわせて病院経営を圧迫するみなおしは、医療供給体制の安定を破壊し、医療従事者の安上がりな不安定雇用に結びつくことも懸念される。

  3. 全労連は先の通常国会で健保改悪法案の可決成立にあたっても、「日本の医療制度を抜本的に改革する道筋は、なによりも政府が削減してきた国庫負担を元に戻すことであり、リストラ「合理化」の拡大による保険料収入の低下を雇用の確保で改善させ、高い薬価を引き下げることである」と指摘してきた。本日閣議決定された医療改革の方向は、ますます健康不安を拡大し、「いのちを削る医療制度改悪」となると言わざるを得ない。
     政府の目指す「改革」の真の目的は、国と大企業の医療・社会保障負担の削減であり、医療・介護など社会保障分野への市場参入に道を開くことでもあり、憲法25条をないがしろにするものである。
     全労連は、今回の新たな医療制度の抜本改悪に反対を表明するとともに、国民の「いのちとくらしを守る」政治の実現のため、3年春闘での要求前進と、住民のための自治体運営の実現めざし全力をあげて統一地方選挙をたたかう決意である。

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