【談話】

雇用の流動化・不安定化を一層促進する「職安法・労働者派遣法」閣議決定に抗議する

2003年3月7日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 政府は本日、「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案」について閣議決定をし、同法案はただちに国会に付託されることになった。
     全労連は「改正法律案」は派遣労働者の労働条件や権利を確立する方向でなく、劣悪な派遣労働の一層の拡大につながるものであり、廃案を求める。

  2. 「法律案」では職業紹介事業の許可について事業所単位から事業主単位へと許可手続きを簡素化、また、兼業禁止の廃止などの規制緩和を盛り込んでいる。これは、派遣法の紹介予定型派遣の拡大をねらった法改悪とも連動しており、本来、国民の勤労権を保障するために国家が責任をもって職業紹介を行うべきものを、営利目的の民間企業にゆだねる流れを、一層、推し進めるものである。労働者派遣法では派遣事業の届出単位を事業所単位から事業主単位に手続きを簡素化。「紹介予定派遣」について事前面接や履歴書の交付を解禁した。派遣期間を1年から3年に延長。物の製造への派遣解禁、社会福祉施設への医業の派遣解禁を盛り込んでいる。

  3. 本来、派遣は一時的、臨時的なものであり、高度な技術を要する業務にのみ限り、例外的に認められるべきであり、事実上、一般事務も含めあらゆる業務に無制限で派遣労働が導入されている実態こそ、規制・監督を厳しくし、改めるべきである。製造業への違法派遣の横行を追認した「物の製造」への派遣導入、社会福祉施設への医業の派遣の解禁も重大な問題を含んでいる。社会福祉施設への医業の派遣解禁は、一方で経済特区構想のもとで、自費診療を認めるなど、医療に株式会社を参入させるうごきとあわせ、日本の医療制度を根本からゆるがすことになりかねない。ひいては国民が安心して医療を受ける権利を大きく阻害しかねないものであり、断じて容認することはできない。
     労働者派遣法は「派遣労働者の就業条件の整備」を図るという規制内容をもっているが、今回の改正では賃金や諸労働条件について目立った改正が盛り込まれていない。職場に派遣導入にあたっては労働組合に通知しその意見を聴くとしているが、これは労使協議と合意事項とするべきである。

  4. 本日7日、自民党の坂井隆憲衆議院議員が人材派遣会社からの政治献金疑惑で逮捕された。同議員が裏献金企業との関係を深めたのは、「人材派遣は原則自由」に規制緩和された前回の派遣法改悪時期でもある。派遣会社は今日の大不況のなかでも年間売上高1兆9千億、対前年比16.4%増と飛躍的に収益を伸ばしつつある。これはすべて、正規労働者の代替として、低賃金・劣悪な労働条件で派遣労働者の供給を拡大している結果である。当時、労働政務次官であった坂井隆憲議員が、派遣法の規制緩和に果たした役割は今後の国会論議や、司直の追及で明らかになるであろうが、金で政治を操り、利益誘導を期待した人材派遣会社の体質も、糾弾されてしかるべきで、やはり人材派遣の法的規制と監視を強めることが重要であることを示している。

  5. 私たちは同法の廃案を求めると同時に、法的規制と監視を強め、派遣労働者の権利・労働条件の向上がはかられるよう、抜本的な派遣法の見直しを求めて、運動を一層強化するものである


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