2007年3月

最低賃金制度の抜本的改善を求めて

全国労働組合総連合

はじめに

  全労連は全国一律最低賃金制の確立を「行動綱領」に掲げて結成され、一貫してその実現を追求してきました。同時に、その展望を切り開くためにも、現行の地域別最賃の改善とあわせて、その限界と問題点をも明らかにする取り組みを重視してきました。ワーキングプアが増加する今日の情勢は、最低賃金制度の抜本的改革・強化が待ったなしの重要課題であることを示しています。

1)

政府は日本経済について、景気回復が進み「いざなぎ景気」を超える戦後最長の拡大を続けているとしています。しかし、その実態は、財界・大企業の徹底したリストラ・コスト削減と、これを支援するための「規制緩和・構造改革」による勤労国民犠牲の「リストラ景気」です。その結果、先進資本主義国の中でも極めて深刻な「貧困と格差」が国民のなかに急速に拡大し、大きな社会問題となっています。このままでは労働者の生活のみならず、企業活動も含む国民経済全体に深刻な影響を及ぼすことになります。事態を打開するためには、最低賃金制度の抜本的な改善による労働者の賃金底上げと、賃金水準の引き上げが不可欠・不可避です。

2)

他方で、政府・財界サイドから、私たちとは違った視点での最低賃金制度見直しが主張されています。1959年に制定された現行最賃法は、76年の「法改正」をもって、現在の都道府県ごとの「地域別最賃」と「目安制度」が設けられるようになりました。しかし、財界は現行法に引き継がれた「産業別最低賃金」を一貫して敵視し、その廃止を主張してきました。また、企業の「支払い能力」などを口実に、労働者からの「地域別最賃」の引き上げ要求に対しても、一貫してこれを否定する態度をとりつづけています。

3)

財界の主張を受けて政府の「規制改革・民間開放推進3カ年計画」が制度見直しを打ち出したこと、さらには非正規労働者増大などの「環境変化」もあるなどとして、厚生労働省は最低賃金法の改正を検討、審議してきました。こうして07年3月13日、政府は国会に「最低賃金法の一部を改正する法律案」を上程しました。産業別最低賃金については民亊効のみとされ、労働協約拡張方式は廃止とされるなど改悪面もありますが、他方で最低賃金が「あまねく全国各地域について」決定されるべきとされ、私たちがかねてから主張してきた「生活保護より低い最低賃金」問題の解消、軽すぎる罰則の強化など改善の方向も打ち出されています。
 第166通常国会では、「貧困と格差」拡大の問題が論点としてクローズアップされ、野党各党から「最低賃金を1000円に」「全国(一律)最賃制を」「先進国の中で日本の最賃は取り残された」との声がだされるようになっています。これに対する政府・厚生労働省の国会答弁は、現行の最低賃金は低すぎるという認識は示されているものの、生活できないほど低く設定されてしまった現行の地域別最低賃金額について、これを具体的に改善するのはあくまでも地方の最低賃金審議会だとして、法の趣旨にもとる現状を是正するための措置を積極的にとろうとはしていないのが、今の状況です。
 情勢は、いまこそ、ナショナルミニマム確立と最低賃金制度の抜本的な改善をおこなうことがきわめて重要になっており、しかもこれまでの枠組みを超えた制度のあり方を含めた政策論議・政策展開を実現するチャンスでもあることを明らかにしています。

深刻さ増す「貧困と格差」の拡大

 「ワーキングプア」といわれる、働いても貧困から抜け出せない労働者が増え、貧困と格差の拡大が社会問題となっています。背景には財界・大企業による徹底したリストラ、コスト削減、人員削減と非正規労働者への置き換え、賃金引下げがあり、それにあわせて、労働諸法制の改悪でこれを支援し、社会保障制度の連続的改悪と増税などで勤労国民に「痛み」を強いる自公政権の「構造改革」路線があります。

1)

大企業が史上最高益を更新する一方で、平均所得の傾向的な低下と貧困の拡大が急速に進行しています。国税庁の「税務統計から見た民間給与の実態調査」によれば、2000年と2005年の5年間に民間労働者の平均年収は24.2万円も引き下げられ、労働者総数が横ばいなのに企業の支払った給与総額は約10兆9千億円も減らされています。しかも重要なことは、賃下げ攻撃や正規から非正規への置き換えなどで年収300万円以下の労働者が1692万人と約200万人も増大し、民間労働者の37.6%にも達しています。そして、働いているのに生活保護水準以下の生活を余儀なくされている「ワーキングプア」は、全国で800万世帯(*注)に達しているといわれています。その一方で、「法人企業統計」によれば企業の当期純利益は史上最高益を更新し、この間に2.75倍も膨らんでいます。

2)

05年の政府統計によれば「フリーター」201万人、「ニート(若年無就業者)」64万人、失業者313万人、生活保護受給者147万人、平均年金月額5万円程度の国民年金受給者2300万人等、低所得の勤労国民の総数は約3000万人に達しています。上記の低賃金労働者を加えると、わが国の勤労国民のうち4600万人以上が、年収300万円以下の生活を余儀なくされていることになります。しかも、「構造改革」による社会保障の連続的改悪と定率減税廃止などの増税で国民には13兆円を超える負担増が押し付けられるなど、憲法第25条の形骸化が、実態として進められています。
その一方で、メリルリンチ日本証券の「ワールド・ウェルス・レポート2006年版」によれば、世界の「富裕層」(居住目的不動産を除く純資産100万ドル以上)の16%、6人に一人が日本人で、前年比7万人増の141万人となっています。野村総研の推計によれば「金融資産5億円以上」の「スーパーリッチ」世帯は6万世帯に増えています。
政府がどんなに否定しようと、わが国の勤労国民の中に「貧困と格差」の拡大が進行していることは政府自身の各種統計やさまざまな具体的事実によって明らかにされています。

(*注)

ワーキングプアとは、正社員並みにフルタイムで働いても(またはその意思があっても)生活保護水準以下の収入しか得られない就業者のこと。統計としては、総務省の就業構造基本調査が、数字の根拠となる。これに基づく推計でみると、ワーキングプアの世帯数は次の通りとなる(朝日新聞2006年11月04日・週末特集be-b「be word」記事。執筆者は後藤道夫・都留文科大教授(後藤道夫「過労をまぬがれても待っている「貧困」」、『週刊エコノミスト』2006年7月25日号)
   1997年 514万世帯 14.4% 
   2002年 656万世帯 18.7%
   2005年 700万世帯〜800万世帯 20.0%前後?(推定)

最低賃金制度の抜本改善を

(1)現行最低賃金制度の問題点

 「貧困と格差」が勤労国民のなかに拡大している背景に、現在の最低賃金制度が労働者の最低生活を保障する「セーフティネット」として機能していないことが大きな要因としてあります。全国各地で取り組まれた「最賃生活体験」(最低賃金水準の所得で一定期間暮らす試み)が明らかにしているように、今の最低賃金の水準は「人間らしい生活」には程遠く、低賃金や地域間の賃金格差を固定化させる役割を果たしているのです。

1)

憲法は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(第25条)こと、そして「すべて国民は、法の下に平等」(第14条)であることを保障し、憲法に根拠をおく労働基準法第1条は、全国どこで働こうとも賃金は「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」であることを規定し、「労使関係の当事者は、その(この法律が定める最低労働基準の)向上を図るように努めなければならない」としています。

2)

ところが、現行の最低賃金法(第3条)は「最低賃金の原則」として「労働者の生計費」と同時に「類似の労働者の賃金」や諸外国にも例のない「支払い能力」を併記しています。
政府や使用者側は後者の二点を盾に、「労働者の生計費」を無視し、「類似の労働者」を「最賃水準の賃金を適用される可能性の高い労働者」層に置き換え、労働者全体との比較をせず、劣悪な労働条件の多い小零細企業の労働者との賃金比較に固執、さらには「法の下の平等」に反して地域間の賃金格差を固定・拡大しています。また、私たちの「生計費」原則に立った改善要求には地場賃金の低さや企業の「支払い能力」などを口実に、これを拒否しています。
現行法の不十分さが、こうした使用者側の不当な主張を裏打ちし、極めて低水準な現行最賃を抜本的に改善するうえでの最大の障害になっているといえます。また、現行法の罰則の軽さも最賃法違反がいまなお全国各地でまかり通っている大きな要因となっています。

(2)私たちの抜本的改善要求の基本

 現行制度の問題点を改善し、最低賃金制度をして、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」や「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」として、さらには「法の下の平等」を保障するものとして確立するためには、ILOの報告などでも明らかにされている最賃制度をめぐる国際的な到達点も踏まえつつ、以下の点を法・制度に盛り込むことが不可欠です。

1)最低賃金の水準設定の原則について

 最賃水準の設定に当たっては、「生計費原則」を基本に、全国共通の「最低生計費」(可処分所得ベース)を公的に明らかにし、これに「勤労にともなって必要となる経費」と「税・社会保険料負担」分を加味したものを「生活の安定と労働の質の向上」(最賃法第1条)のための必要を充たすべき「最低賃金水準」とする。

 その水準については、最賃が適用されるすべての労働者の賃金動向に照らし、一般労働者の平均賃金の年収ベースで50%を超えるものでなければならない。
※ 最低生計費は生活保護基準の水準とし、「勤労必要経費」はフルタイムで就労している単身者(18歳)の実態生計費などを基に算出する。
※ EUでは05年の「欧州最低賃金会議」において、当面の最低賃金を一般労働者の平均の50%に、将来的には60%に引き上げることを決定している。
※ 現行法にある「事業の支払い能力」は法・制度の立法理念に反するので削除する。

2)最低賃金の額は、月額、日額、時間額として定める。

3)適用対象について

 全国の「すべての労働者」とし、地域、産業、雇用形態、国籍などにかかわりなく、同一額の最低賃金を「全国一律最低賃金制度」として統一的に適用する。

※ 公務員、船員、さらには「契約」相手から「報酬を得ている者」も対象とする。

4)産業別最低賃金

 現行法による「産業別最低賃金」の制度は継続し、「資格職種」など特定の産業内の基幹職種を適用対象とする「職種別最低賃金」を新設する。

5)最低賃金の決定機構などについて

 最低賃金の決定は、国家行政組織法(第3条、第8条)にもとづく最低賃金委員会において出席委員の過半数の賛成によって決定する。委員は、労働者・使用者・公益の三者構成とする。

 労働者委員は労働組合全国中央組織及び全国的労働組合組織から推薦された者の中から、労働団体の潮流・系統の違いに配慮しつつ任命する。公益委員の任命は、労使双方の合意を必要とする。

 最低賃金委員会は、産業別最低賃金(職種別賃金)の申請受理等のため地方にも事務局を設ける。

6)監督と罰則の強化

 最低賃金額を労働者と使用者に徹底するとともに、重層的下請け構造が各産業で広がっているもとで、元請(親)企業も監督行政の対象にできるよう強化する。

 法違反に対する罰金額は労働基準法第24条違反よりも高いものとする。

 監督機関に対する申告及び申告に伴う不利益取扱いの禁止にかかわる規定を創設する。

7)経過措置について

 現行の地域別最低賃金の金額を、前掲「1)最低賃金の水準設定の原則について」で示した全国共通の新「最低賃金水準」へと改正するに際しては、全地域で抜本的な引上げが行なわれることとなる。全国一律制度に改正するにあたっては、次のような措置をとることとする。中小企業の経営状況に配慮し、経済的波及効果を確かめつつ、複数年次をかけてあるべき最低生計費水準にまで引き上げていく。

 現行制度において比較的金額水準の高い地域(現行制度のA、Bランク地域)は、制度施行と同時に、新しい「最低賃金水準」を適用するものとする。

 現行制度において相対的に金額水準の低い地域(現行制度のC、Dランク地域)は、一定の移行期間をとり、できるだけ速やかに金額を引き上げて、新しい「最低賃金水準」を適用するものとする。

(3)最低保障年金制度確立、生活保護改善の運動などと一体的な追求を

 最低賃金制度の抜本的改善と、全国一律最低賃金制度の確立は、これをテコに国民生活のなかに広がる貧困を根絶し、格差を是正する課題でもあります。最低保障年金制度確立、生活保護改善など憲法第25条が謳っている最低限度の「健康で文化的な」国民生活の最低保障と一体的に追求することが重要です。

1)

全国一律最低賃金制度は、全国どこで働いても、誰もが健康で文化的な生活を安定して営み、労働力の質を高めることができるような生活水準を保障するものです。生計費を基礎に、賃金の最低規制をする原則は、ILOの「最低賃金決定制度の適用に関する勧告」(第30号)にも明記されている重要な原則です。また、全国一律とすることの重要性は、第一に、地域別の不当な格差が企業間競争の口実に使われ、労働者の賃金をさらに押し下げているもとで、その是正と賃金水準の底上げにつながること、第二に、下請け単価や工賃の適正化につながり、企業間の「公正競争」確立と中小・零細企業の経営環境の整備に資すること、第三に、制度が一律に決定されることで、年金や生活保護、雇用保険、民事再生など諸制度の公的給付や税制と整合性のとれた制度運用が可能となるほか、農業従事者の所得保障との整合性もとれるようになります。

2)

私たちは、全国一律最低賃金制の要求額として、当面、「最賃時間額1,000円以上、日額7400円以上、月額15万円以上」をかかげています。この水準を最低額とした全国一律最低賃金が確立すれば、国民生活には次のような多くの影響を与えることが可能となります。

第1

に、なによりもパート・臨時などで働く多くの低賃金層の賃上げにつながります。

第2

に、最低賃金の引き上げは、初任給の引上げを促し、社会的に形成される一般労働者の賃金引上げにも波及します。

第3

に、企業間の過当競争を抑制させ、中小零細企業や労働者に対する過当競争のしわよせが緩和されます。(企業は、全国どこで事業をしようと、生活保障ベースの最低賃金を前提に事業計画をたてなければならず、この賃金を下回る単価設定はできなくなり、不当な下請いじめや、行き過ぎた競争入札を抑制できる。つまり、大企業に社会的責任(CSR)を果たさせるための重要な規制となる。)

第4

に、公正競争ルールが確立されることで、労働者の大多数が働く中小企業の経営環境が改善され、そこで働く労働者の賃金・労働条件改善の可能性も拡大されます。

第5

に、公的に明らかにされるべき最低生計費を基軸とした、全国一律の最低賃金が確立することは、全国民の最低生活を保障する各種制度(ナショナル・ミニマム)の確立をはかる第一歩となります。

3)

労働者と国民、官と民、正規と非正規労働者等々、さまざまな形で国民諸階層が分断され、それをテコに勤労国民のなかに所得や生活水準の「低位平準化」や「貧困と格差」が進行しているもとで、私たちの運動は常に国民的視野で取り組まれることが不可欠となっています。

  とりわけ、すでに閣議決定されている「骨太方針2006年」が、「最低賃金」を上回る生活保護制度やその給付水準の引き下げ、年金制度など社会保障制度のさらなる改悪と負担増を国民に押し付けようとしているもとで、これらの諸攻撃をはね返す国民的共同・連帯の運動を労働者・労働組合としてもいっそう重視することが重要になっています。

以上

全国労働組合総連合「最低賃金法改正要求大綱」   2007年3月

1.最低賃金制度の目的
 最低賃金法は、労働者が健康で文化的な生活を営み、働くために必要な賃金の最低限の額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定に寄与すると同時に、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資することを目的とする。

2.最低賃金の決定基準
 最低賃金は、労働者が健康で文化的な最低限の生活を営むために必要な生計費を基本に、勤労にともなう経費と税・社会保険料負担分を加えたものとして定めるものとする。
また、その水準は労働者一般の平均賃金の年収ベースで50%を下回ってはならないものとする。

3.最低賃金の額

 最低賃金において定める賃金の額は、月、日、時間によって全国一律に定めるものとする。

 出来高払い制その他の請負制で使用される労働者についての最低賃額の適用については、その者の賃金が時間によって定められているものとみなす。すなわち、出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額とする。

4.最低賃金の種類と競合

 最低賃金は、全国一律最低賃金、産業別最低賃金、職種別最低賃金の三種類とする。

 産業別最低賃金、職種別最低賃金は、全国一律の最低賃金を下回ってはならないものとする。

 労働者が複数の最低賃金の適用を受ける場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最も高い額の最低賃金を適用するものとする。

5.最低賃金の効力
 使用者は、労働者に対し最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約のその部分については無効とする。無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなす。

6.最低賃金法の適用範囲
 最低賃金は、地域、産業、雇用形態、国籍などにかかわりなくすべての労働者に適用する。
公務員、船員、さらには「契約」相手から「報酬を得ている者」も対象とする。

7.最低賃金委員会の設置と構成

 最低賃金の額は、内閣総理(厚生労働)大臣に任命される労働者・使用者・公益委員の三者構成によって設置される最低賃金委員会において決定される。

 委員の構成は、労働者・使用者を代表する委員数は同数とし、公益委員はその半数とする。

 労働者委員は、労働組合全国中央組織及び全国的労働組合組織から推薦された者の中から、労働団体の潮流・系統別に配慮して選出する。公益委員の任命は、労使双方の合意を必要とする。

 最低賃金委員会は、産業別最低賃金(職種別最低賃金)の事務をおこなう地方事務局を設置する。

 最低賃金委員会の議事は公開を原則とする。

8.監督行政と罰則

 最低賃金額を労働者と使用者に徹底するとともに、監督行政については元請(親)企業も対象にできるよう強化する。法違反に対する罰金額は労働基準法第24条違反よりも高いものとする。

 監督機関に対する申告及び申告に伴う不利益取扱いの禁止にかかわる規定を創設する。

9.経過措置について
 現行の最低賃金が、新たに定める全国一律の最低賃金額を大幅に下回る地域については、計画的・段階的に引き上げる経過措置を設ける。
 最低賃金制度「関連法案改正」要求について
 今国会で最低賃金制度の抜本改正を実現した後、国民経済・国民生活全体の最低保障を確立する作業を進める。当面、以下にあげる中小企業関連、官公需関連、年金関連の諸法律・制度等の改善を要求する。

(1)「下請中小企業振興法」

 (振興基準)第3条「経済産業大臣は、下請中小企業の振興を図るため下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準(以下「振興基準」という。)を定めなければならない。」
この「振興基準」を改善し、民事効を付与する。
「1.取引対価は、取引数量、納期の長短、納入頻度の多寡、代金の支払方法、品質、材料費、労務費、運送費、在庫保有費等諸経費、市価の動向等の要素を考慮した、合理的な算定方式に基づき、下請中小企業の適正な利益を含み、労働時間短縮等労働条件の改善が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定すること。」


(2)「下請代金支払遅延等防止法」

 第3条「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。」
  運用基準の見直し:違反事例の指針の改善
①最低賃金を割り込むような、低額の価格の押し付けは認められないものとすること。
②原材料費や最低賃金などのコスト増に伴う単価上昇を認めないことや、下請の技術開発を勘案せずに単価を引き下げることは違反行為とすること。


(3)「中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律」

 第3条「厚生労働大臣及び経済産業大臣は、中小企業者が行う労働力の確保を図るための雇用管理の改善に係る措置及び良好な雇用の機会の創出に資する雇用管理の改善に係る措置に関し、基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。」


(4)「会計法」

 第29条の6「・・契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。ただし、・・その者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認められるとき・・」


(5)「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」

 第15条「国は、各省庁の長等による公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(「適正化指針」)を定めなければならない。


(6)「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」

 第4条「国は、毎年度、国等の契約に関し、国等の当該年度の予算及び事務又は事業の予定等を勘案して、中小企業者の受注の機会の増大を図るための方針を作成するものとする。」


(7)「国民年金法」

 第1条「国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」

 第4条「この法律による年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。」

以上